非定型発達のお子さん支援例①

非定型発達のお子さん支援例①

こんにちは、花崎です!
人口比20%くらい存在していると言われている非定型発達(発達障害グレーゾーン)。
そして「誰しも」が多少の発達特性を、持っているのかもしれないという現実。
ですから知っていて損はない♪ そんな情報をお届けします。
今日は実際にどのような支援をしていくのか、イメージを持っていただくために、具体例にて1つの支援例をお伝えしていきますね!

まず前提として

まずは困難を抱えている人(Aさん)を、どのような人物かイメージしていただきます。
世間の印象では真面目で大人しい、穏やかな笑顔の女の子と想像してみていただけますか?笑
ふんわりした印象も知的な印象もある、とてもHSCっぽい、控えめな気遣い上手な人物像、ごく普通の女の子! でも小中学生じゃないですよ、もっと成長している子です。

こんな会話がありました

お母さんが居ないときに、お父さんが「冷蔵庫のプリン、俺も食べていいのかな?」って聞いてきて、私困ってテンパっちゃって!!

こんな会話が聞けたとします。まあ正直に言うと、我が家でホントにあった話…実話です。
そう、Aさんは私の娘!笑

その瞬間私、ピン!とアンテナが立ちました。

学んでいくとどのお母さんもアンテナ立ちます!

そんなことで、なぜテンパるくらいに困ったんだろう…
疑問を感じたら、ちゃんと質問します。〈何にそんなに困ったの?〉

説明補足:4人家族なんですがプリンを3個しか買わず、お父さんの分だけ無かったんです。お父さん留守中に3人でこっそり食べちゃうつもりが、お腹がすいていないって理由で冷蔵庫へ入れ。そのままお父さんが帰宅してしまったんですね。ちなみにそういうことは過去無くて、このときが初めてだったかもしれません。いつもは必ず4個買うのです。
(非定型発達さんは、初めてのケースへの対応が難しく、未経験への答えが自分では導きだせず困る場合があります)(ちなみにお父さん=夫は超優しくてプリンくらいでは怒らない人です)

どのような会話があったのか詳細を確認する

〈お父さんに「俺のプリンはある?」と聞かれて何と答えたの?〉私なんて言ったらいいのかわからなくなっちゃって「お父さんにはレモンサワー、私にはプリン」って答えたの!〈そうしたら?〉お父さんが「え?」って言ったから焦っちゃって「だからお父さんはレモンサワー、私はプリン…」って。〈それでお父さんはどんな反応?〉「どういうこと?」って聞き返されて困っちゃってね「だからね、お父さんはレモンサワーでしょ、私はプリンだよ!」って言ったの。

〈〉の会話は私で、太字は娘のセリフです!笑

ここであえて言わせてくださいね。娘の返答は辻褄あわないし、3回もまったく同じ返答を繰り返すなんて会話としてかなり幼稚に感じられると思うのですが、これはいつもの様子ではないです。
普段は私のようにスムーズに話す子…
だから私、この回答を聞いて思わず爆笑しちゃって♪(カウンセリングでは笑いません)
…よほどテンパったんですね。

普通の人が困らないようなところで困ったエピソードを聞いたとき、それは、その人の抱える困難を知るチャンスです! こういうきっかけを大切にするといいですよ。

それにしても意味不明な珍回答、面白すぎて、娘が可愛く思えてガハガハ笑ってしまいました…
そしてここからは子どもが状況を理解し、経験を学習にかえられるような会話を繋げていきます。

補足説明:夫は毎晩レモンサワーで晩酌します。そのお酒は自分のお小遣いのお金で買っています(かわいそうに…!)。先日一緒にお買い物したときに家計で「泡の出る缶ビール」を数缶買って喜び、美味しそうに飲んでいました。その情報、ちょっと覚えておいてくださいね。

なぜ困ったのか

美味しそうなプリン、家族のために一生懸命働いてくれているお父さんの分だけがなく、残りの家族だけが美味しそうに食べるなんて、そんなヒドイこと、できない! それが娘の思考。
そしてお父さんの分だけを買ってこなかった「正当な理由」が思いつかない!

AS(自閉スペクトラム)傾向のある子は、思考が正義論に偏りがちです。
それから言葉もそのまんまの意味で受け取りがちです。
言葉の使い方に対しても、全体のなかの標準の枠のような捉えができません。
適当とか、ざっくりとか、今回だけとか、その場限りとか、曖昧とか、そういう会話も苦手。

事態に対しておおよその正解がわかっていれば、そこから少しアレンジを効かせた話し方が、ユーモアであったりジョークであったり大人びた表現であったり面白ゼリフであったりすると汲み取れますが、まず「核」となる正解(常識)がわからない状態で生きているので、日々の経験により知識を積み重ねるイメージで常識を蓄えこれまで成長してきているのです。
違う表現をする人がいたり、ひねりがあるなど会話が高度になってくると、意味がわからずに混乱してしまうことがあるのです。

過去に経験していないことや、イレギュラーな事態が起きたときには、正解がわからずに困るようなことが起こります。娘の場合は親である私の言動が「間違いのない正しさ」と捉えて、それを標準にして生きてきているようなところがあるので、今回のことには数時間前の私のセリフが影響したようです↓

プリンを冷蔵庫に仕舞うとき、娘が心配そうな顔をして、私に確認してきていたんですね。
お父さんの分がないのに、どうしよう、って。早く食べないと、仕事から帰ってきちゃうよ、って。その話が長かったので、私、言ったんです。
〈お父さんだって一人でこの前、泡の出るビール飲んでたでしょ。私たちだけがプリン食べることだってあるよ、気にしなくて大丈夫♪〉

人の言葉を鵜呑みにしてしまう

そうか! お父さんだって一人でお酒飲んでたんだ。

娘にとって、特性でわからないことがあって困ったときに、今まで寄り添うように助けてくれたのは私(花崎)のみでした。だから母親である私の言葉には絶対的な信頼を寄せていて…。
そして、それ以外の答え(意見)は見つけられなかったので、父親に聞かれたときにもその答えしか頭に浮かばず、同じセリフを繰り返すのみになってしまったのでしょう。
さらにはそんな普段と違う自分に焦り、テンパるというかパニクったのでしょう。

でも非定型発達のお子さんの脳のバランスを知れば、これらは仕方のないことなのです。
他の難しいことにも充分対応できる子が、この程度の単純なことがわからない、これが発達特性の表れなのです。

娘の思考の落としどころは→お父さんもお酒を飲んでいる、私たちもデザートを食べるは○

次の機会に繋げる会話を重ねる

非定型発達さんを支援しているお母さんたちへのヒントですが、ここで会話を終わらせてはいけません。なにがどうなっていたのか、どう会話したらいいのか、その学びがあれば安心ができ、次の機会への不安も減るのです。わからないを、わかるに変える! それが必要です。

〈どうしてそんな回答になったの?〉から聞き始め、詳細を把握します。〈そうか、お母さんが、お父さんだってお酒一人で飲んでるでしょ、私たちだけでプリン食べることも気にしなくていいよ、って言ったからその会話になったんだね〉そうだよ。〈どういう風に考えてたの?〉自分の分だけプリン買ってきてもらえなかったら、すごく悲しい気持ちになると思って。ひどいと考えると思って、お父さんが可哀想になって、どう言っていいのか悩んじゃって。〈そうか、思いやって悩んだんだね。でもその回答は、どうだろう。お父さんからしたら、何を言っているのか意味がわからなかったんじゃないかな〉んー。〈考えてみて。まずお父さんの気持ちになってみれば、自分のお小遣いで買ってるお酒を引き合いに出されて、あなたはお酒飲んでるでしょ、だから私たちはプリン食べるよ、って回答はちょっと意味不明、違和感だよね〉だってお母さんがそう言ってたよ。あと、レモンサワーと泡ビールを間違えた。〈そうだね。そこが面白い!笑 …でもさ、お母さんが言ったあれは、お父さんが居ない場でのみ言ったセリフだよ、そういうのは、お父さん本人にはそっくりそのまま伝えたりしないよ〉そうなの?〈そうだよ、だいたいお父さんが働いたお金でお酒を飲んでいたとしても、だから私たちは私たちだけでプリン食べるよ、ってその会話はちょっと強引だよね〉そうだね、でもだったらお母さんにもそう言ってほしかった、心にも無いことは言ってほしくない、混乱しちゃうから。〈そうだね、でも人はそういう会話をするものなんだよ。〉じゃあ、冗談は言ってもいいから、直後に「これは冗談だよ」「本気じゃないよ」ってちゃんと言ってほしい。じゃないと私にはわからないから、だからいつも失敗しちゃう。〈そうだね、でもなかなかそういう会話はしないよ。冗談言うたびに「これは冗談だよ」ってみんなも言ってくれないんじゃない? 本気半分、冗談半分以上って会話があるってことを、知っておいたほうがいいかもしれないね〉わかった、じゃあお父さんには何て言ったらよかったの?〈うーん、お母さんなら2通りのパターンが考えられるかな。①本当のことを言うパターン:ごめんね、お父さんの分だけ今回はないんだ…今度また買ってくるね!など。もう1つは②優しい嘘をつくパターン:自分のお小遣いで買ったから自分の分しか買わなかったの、お父さんの分買えなくてごめんね…とかかな。あとね、人って本音と建前というか、本人には聞かせないから言うこととか、使う言葉とか、あるんだよね〉

それから、人の会話には、多くの意味があることも伝えました。
〈お父さんも泡ビール飲んだし…ってのは、結構(お母さんにとって)適当な意味の会話だったんだよね、その場限りの言い分というか。漫才のボケつっ込みみたいな。ジョークじみているというか。イジリっぽいというか。まっいいじゃん!みたいなニュアンスが一番近いかな、とにかく深く考えて言った言葉じゃなかったんだよ。人って、そういう会話を楽しむときがあるよ〉

会話ののちに納得

我が家のこういう会話は、いつも笑いに溢れています。
日々、嘘みたいな、想定外の出来事も起きますよ。でもとにかく明るく楽しくの家庭なので、娘もどんなときも笑っているし、家族で困りごとを含め情報を共有しています。

そんな家庭内でのことですから娘は傷つきませんでしたが、これが学校やサークルなどで起きたことだとしたら。「何あれ?」「変な子」「性格わるい」など、相手次第ではどのように受け取られてもおかしくはありません。
たった一度のことで悪口をいわれる存在になる、そんなこともあるのです。

発達特性のある子は、外で失敗しないかとヒヤヒヤしながら過ごしています。
高学年にあがるにつれ、友だちの指摘もズバッと核心をつく、歯に衣着せぬものになっていきます。ときには「おかしいんじゃないの?」「あの子変わってる」「は?」などと言われ、でも本人は何のことやら意味がわからない。どこをどう直していいのかもわからない。それは大きな大きな不安を招くことなのです。

お母さんができる最高の支援

家庭が温かく、安心安全な場所であると、子どもは臆さず小さなストーリーも語ってくれるようになります。語らずに黙っていたときにはわからないほど、たくさんの困難を抱えて生きていたことがわかることもあるでしょう。お母さんはその1つ1つのストーリーに寄り添い、心を支えてあげてほしいのです。

ある日ひょっこりと、「友だちの話していることの意味が、わからないんだよね」「会話が噛み合わないんだよ」なんて言うこともありますよ。そんなときにも、お子さんがどこでどうつまずいているのか、話してみてくださいね。

非定型発達さんは、定型発達とは違う世界を見ているようなところがあります。定型発達の人のほうが圧倒的に多い世界を生きるとき、壁にあたり、つらいこともあるでしょう。
そんなとき、「定型発達」の世界を説明し、認識の差と、こうしたらよいかもしれないよ、という提案は、定型発達の人にしかできないことかもしれません。
もしお母さんやお父さんが同じく非定型発達さんであると、お子さんの不思議にも気づかず、相談にも返答ができないかもしれません。
私にできるお手伝いがありましたら、ぜひ個別相談をご利用ください。