アレキシサイミア(失感情症)傾向

アレキシサイミア(失感情症)傾向

こんにちは、花崎です!
娘が心身症を悪化させてしまった背景には、自分の感情を認識して言葉に表すのが難しい失感情症的な傾向(アレキシサイミア)と、もう一つ、小さな情動や身体感覚に気づくことに難しいというアレキソミア(失体感症)傾向もあったように感じています。
気づきや言葉によって発散することができず、ストレスは身体の症状となって表現されるようになってしまったのではないかと。

過労と疲労と限界に、自分だけ気づいていない

娘の場合、高校時ちょっと度を越した過酷な状況に身を置いていまして。
本人は熱心にそのことに取り組んでいて、意欲に満ちていたんです。親としてもそのやる気や努力に感心し、活動を応援していました。

とはいえ強制的かつ慢性的な過労状況、親としては無理が続いているとも感じていました。
ただ本人は前向きに挑んでいる、だから家庭では片づけほか何もできないほどに疲労していても、多少のことは大目に見ていました。
お弁当箱を出さずに眠っちゃっても洗ってあげたり、チョコチョコとフォローをしながら…

ところがある日、ある時期から、異常な事態になっていきます。

夕食を食べていたのに爆睡している

時間が遅いので帰宅後すぐに夕食。
ところが食べ始めていたと思ったら、キッチンから振り返ると床で爆睡しているんです。
声をかけても、揺り動かしても起きない、ちょっと異様な感じの眠りです。

何とか自転車で帰ってきたものの、疲れ果ててしまっている。
起こして入浴を促しても、這うようにして脱衣所までは行くものの、体育座りをしたまま動けません。

早くお風呂に入って、布団で寝ることを促しても動けません。
もう入らず眠ったほうがよいのでは?と声をかけても、朦朧としていて、顔は伏せたまま。
脱衣所に2時間、体育座りのまま。

寒い冬。毎日のだらしのない姿に、内心腹が立っていました。それでも放っておくのは気が引けて、私も娘を起こし続けます。

体育座りからやっとこさ立ち上がり、ようやく風呂に入る音が聞こえてくるとホッとして。
ところが音が途絶えたまま時間がどんどんと過ぎていき。何時になっても風呂から出てくることがありません。深夜12時なんてざらです。

湯船で爆睡するほどの疲労

音がしないので何度もドアの外から声をかけて。
返事がないので仕方なく脱衣所の鍵をコインで外側から開け入る、風呂場にノックをしながら娘を呼ぶ、それでも返答がなく。

風呂場のドアを開けると、湯船でぷかぷか浮くようにして爆睡しています。
大きな音がしても、大声で名前を呼ばれても、反応なし。

その日から、湯船の中で溺れて死んでしまうこともあるため、娘を放置し先に寝てしまうことはできなくなりました。
親の私は長時間睡眠者。ロングスリーパーともいいますが、たくさん眠りたいタイプなので、娘に合わせて深夜まで起きていること、自分のことを自分で完結できない娘の姿にストレスを感じ、その頃の私は日々小言も言っていたと思います。

のちに本で知りますが、発達障害のある子の疲労って、ただの疲れではなく、動けないほどの疲労、そこまで本人は疲労を自覚できないでいることがあるそうなのです。
当時のその姿は「うつ病」に見えていましたが…

大好きな牛乳でお腹をこわし始める

過敏性腸症候群の始まりが、この頃にありました。のちに大変ひどい状態になるのですが、何らかのストレスが、心身に出始めていたのだと思います。

胃腸の痛みに関しても、どこがどう痛いのかなど、説明することが全くできませんでした。
あれから数年経っている今も、そういう表現は苦手でうまく言葉にできないのですが、説明だけができないのではなくて、身体の感覚をちゃんと感じて把握することが、まずできないようです。

時間を経て、気づいたこと

過去を振り返っていくと、娘にはたくさんの試練がありました。
当時の話をしながら感じることですが、娘は相手の言葉や態度から意味を読みとれれず状況がうまく把握できない、そのため出来事の把握や記憶自体が曖昧だったり、ストレスに対してもうまく自分の感情をつかめなかったり、表現力にも乏しかったりと、様々な問題を抱えながら生きてきていたらしいのです。

振り返れば娘に問題が起きたとき、親の私はいつも、そのことをまったく知りませんでした。
(娘がひと言も…グチもこぼさないし、話をしないからです)
必ず第三者、お友だちのお母さんなどから、随分と問題が肥大化したときに連絡が来て知る感じ…

たとえば中学生のとき。
他の部員のお母さんから電話がかかってきて「今から中学校に来て。部活の顧問と面談の約束をしている。娘さんが部活内でひどいイジメにあっていて部活に参加できなくなっていること、知らないの?」と言われ、初耳だったので驚いた経験があります。

当時のことを娘と話しても、あれがイジメだとは思わなかった…とか。嫌なことをされ続けていて相当困っていただろうに、友だちにも悩みを打ち明けない。誰にもグチひとつ言わない。
何より自分の辛い気持ち、感情に気づけないらしいのです。心身には不調がでるんですが。言語化はできません。

高校はもっとすごい。学校に行けなくなっていて、しょっちゅう休んでいたらしいのだけれど親の私は知りません。娘は家で普通に過ごし、何も話さないのです。

娘の友だちのお母さんから「あのね、娘さんが学校休んでいること、知ってるの?」と遠慮気味に言われたときには、休み始めてからもう1年以上が経っていたそうで、本当に驚きました。
先生からさえ一度も連絡がなくて、本当に知らなかったんです。

娘は自分の身に起きていることを感じることが苦手。心の変化、身体の変化。感情。
それは今、随分とわかってきました。
私が言葉にしてあげることで「そういう表現があるのか」と理解していって、少しずつ過去のことも理解が進んでいって…という感じなのです。

非定型発達さんにもこういうことは多い

娘はお医者様に発達障害と診断されていないものの、かなりのASD傾向、それからADHD傾向もあると私は思っています。
アレキシサイミア、アレキソミアなどがある場合があります。
娘のように、真夏の高温の部屋でも窓も開けずクーラーもかけずに火照った真っ赤な顔をしながら平然と過ごしていて「暑くない」と言うなど、感覚の鈍さを持っている人がいるのです。

娘でいえば、他にも、ラジオ体操をしていてもどこの筋も伸びていないような動きをしていて、身体の気持ちよさも感じられないようです。歯を磨くにも、歯ブラシの感覚を受け取りにくく、どこをどう磨いていいのかわからない、といつまでも磨いています。長時間磨いているのに磨き残しが多くてビックリ!笑

他にも挙げたらたくさん出てきます。私たちとは違う感覚を持っている、ということは、見ていて気づくようになりました。

娘は自分の感情、ほか、気づかないことで、人を頼ることができません。
支援を求めるスキル、「自分にはできないと思ったときに人を頼れるスキル」が人には必要で、そういうソーシャルスキルを育む子育てが大切だよ、と言われますが、娘は人にどう話したら状況を理解してもらえるのか、といった、話す(伝える)スキル自体にも問題を抱えています。

私はごくごく普通に育ててきたつもりです。
というより、かなり言葉のキャッチボールの多い子育てをしてきました。
家庭でいつも和やかで、対話や団らんも多い。
困って助けてほしいと言えば、私は助ける親です。
言われないと助けない親でもありましたが…笑

さいごに

アドラー心理学では、課題の分離という考え方があります。
それは誰の課題か、と考え、人の課題に勝手に介入しない、それが基本の考え方です。
私はアドラー心理学など知りませんでしたが、娘を質問責めにして学校の情報を聞き出したり、心配し過ぎて介入したりといった傾向は一切無かったため、課題の分離的には、きちんと分離した対応で、娘のことは娘に任せ、やってきていました。

娘がまさか、苦手の多い子とは知らず、結果として、支援を求められない娘を放っておく形になり、心身の症状の出現にも気づかずに過ごしていた期間が長く、症状が悪化してしまいました。

こういったことは一例ではなく、他のご家庭でも起きていることのようです。
発達障害のお子さんは、その特性が他者によく見えるため、気づいてもらいやすいのですが、言葉や知能に発達の遅れが見えない、丁寧な家庭教育により特性が目立たない形に育ったお子さんは、たった一人で苦戦していることがあります。

「嫌だったこと、困ったこと、小さなことでも話していいんだよ、お母さんに聞かせてね、先生にも相談していいんだよ」と小学校高学年までには伝えておくことが、予防に繋がると思っています。それから少しでも表情が曇っているときには声をかけてあげられるといいですね!